ⓔコラム11-5-7 低異型度虫垂粘液性腫瘍 (LAMN)

 虫垂粘液産生腫瘍のなかには細胞異型が軽度であるにもかかわらず,虫垂壁に浸潤露呈して腹腔内播種をきたす進行性の病態をもつものがある.ときには遠隔転移も起こす臨床的にはmalignant potentialのある疾患で,これを2003年にMisdrajiらがLAMNと提唱した1).従来の虫垂粘液囊胞腺腫 (mucinous cystadenoma) の大部分と粘液囊胞腺癌 (mucinous cystadenocarcinoma) の一部がこれに相当する.LAMNは2010年に消化器腫瘍のWHO分類に編入され2),わが国でも2013年に改訂された大腸癌取扱い規約第8版で分類定義された3).WHOでは腺癌の一亜型として分類されているが,わが国では良性上皮性腫瘍としての腺腫にも悪性上皮性腫瘍としての腺癌にも分類されない独立した疾患として分類されている.粘液を産生するという点においては腺腫もときに粘液が貯留し囊胞状に拡張することもある.しかしながら,腺腫は虫垂壁に浸潤することがないので,漿膜面には粘液の付着がなく,組織学的にも腫瘍が粘膜内にとどまっていることがLAMNとの鑑別点とされる4).逆に虫垂壁への圧排性浸潤 (pushing invasion) があればLAMNと診断される.また腺癌のなかの粘液癌 (mucinous adenocarcinoma) との鑑別点は高度の細胞異型か破壊性浸潤の有無であり,LAMNにはこれらを認めない.治療は手術となるが,虫垂を穿孔させてしまうと腹膜偽粘液腫へ移行する可能性があり,手術操作は愛護的に行うことがきわめて重要である.

〔酒井哲也〕

■文献

  1. Misdraji J, Yantiss RK, et al: Appendiceal mucinous neoplasms. A clinic-pathologic analysis of 107 cases. Am J pathol, 2003; 27: 1089–1103.

  2. Bosman FT, Carneiro F, et al: WHO Classification of Tumours of the Digestive System, 4th ed, IARC Press, 2010.

  3. 大腸癌研究会編:大腸癌取扱い規約 第8版,金原出版,2013.

  4. 原喜恵子,斎藤 剛,他:低異型度虫垂粘液性腫瘍 Low–grade appendiceal mucinous neoplasm. 病理と臨床,2016; 34: 1075–1079.